スマホから拠点間VPN経由でひかり電話を利用する

自宅のスマホから拠点間VPN経由で別拠点のひかり電話を利用する機会があり、簡単に設定できたので備忘録として残しておきます。

目的

先日とある連絡先に用事があってスマホ回線から電話をかけたのですが、以下のような自動音声が流れて通話できませんでした。
「おかけになった電話は指定地域外ですので、お繋ぎできないようになっています。」
これは発信地域指定と呼ばれる設定で、指定されている地域以外からは電話が着信しないようになっているようです。

自宅にはスマホしかないので少し困ったのですが、VPNで繋がっている別拠点にあるひかり電話からであれば通話できるかなと思ったわけです。

というわけで、「自宅のスマホから別拠点にあるひかり電話経由で発信することで、指定地域内から通話しているように見せかける」というのが、今回の目的です。
※当然ですが、利用するひかり電話の番号が指定地域に含まれている必要があります。含まれていない場合、ひかり電話を使おうが電話はつながりません。

環境

NW構成図


別拠点には、HGWの配下にVPNルータがあります。
自宅と別拠点はIPv6 IPsecで繋がっています。
自宅のスマホからオレンジの矢印の流れで外部の連絡先に電話することがゴールです。

なお説明の都合上、IPアドレスの割り振りやネットワーク構成は実際のものとは異なります。

機器情報

  • VPNルータ(自宅): RTX830
  • HGW: PR-S300HI
  • VPNルータ(別拠点): RTX1200
  • スマホ: Galaxy S9

設定

設定が必要な機器は、HGW、VPNルータ、スマホです。

HGWの設定


内線設定からユーザIDとパスワードを設定します。
今回は内線番号とユーザIDを同じにしました。
MACアドレスは設定しなくても動作します。


当然ですがHGWから自宅NWへの経路情報がないと通信できないので、スタティックルートを設定しておきます。

VPNルータの設定

IPsecとBGPを設定しておきます。
ここは元々設定している内容から変更していませんし、特に難しい部分もないので省略します。

スマホの設定

AGEphoneというアプリをインストールして、初期設定します。
https://www.ageet.com/agephone


それぞれ以下の値を入力します。

  • Domain: HGWのIPアドレス
  • User Id: 内線設定で設定したユーザID
  • Password: 内線設定で設定したパスワード

Authentication Idは空のままでOKです。

構成や設定内容に問題がなければ、以下のようにReadyと表示されます。

通話を試す

試しに自分の仕事用スマホにかけてみると、別拠点で契約している電話番号が通知されて通話できました。
物理的にかなり離れている拠点間VPN経由ですが、遅延や音声品質はほとんど気にならないレベルで通話できます。
以下、通話中の画面です。

その後、元々の目的であった発信地域指定がされている連絡先に電話したところ、無事に通話できました。

当然ですが、内線電話も可能です。

パケットキャプチャ

SIP REGISTERをリクエストしてから通話を開始した際のパケットキャプチャを参考程度に見てみました。
SIPで呼制御した後にRTPに切り替わっていることがわかります。