RTX830とRTX1210のIPsecスループットとCPU負荷を計測

RTX830とRTX1210のIPsecスループットとCPU負荷を、ローカル環境で計測してみました。
比較のため、IPsecなし(単なるルーティング)のパターンでも計測しています。
現実的に発生しやすい通信を対象とするため、SMB(Windowsファイル共有)で約5GBのファイルをコピーしています。

なお、RTX1200の計測結果は以下の記事で紹介しています。
RTX1200のIPsecスループットとCPU負荷を計測 - RamuneMemo

環境

ルータ1: RTX830 Rev.15.02.25
ルータ2: RTX1210 Rev.14.01.41
PC1: Windows 10 Pro
PC2: Windows 10 Pro

IPsecなし

構成図


スループットとCPU負荷

スループットは約982Mbpsで安定しています。
CPU負荷はRTX830が約40%、RTX1210が約80%でした。

転送中
転送完了

仕様上の最大スループットはどちらのルータも2.0Gbit/sとなっていますが、RTX1210はCPU負荷が少し厳しそうです。

IPsecあり

構成図


スループットとCPU負荷

スループットは約857Mbpsでほぼ安定していますが、一瞬600Mbps程度に速度低下している部分がありました。
CPU負荷はどちらも約95%になっているため、CPUがボトルネックになっている可能性があります。

転送中
転送完了

仕様上のIPsec最大スループットは、RTX830が1.0Gbit/s、RTX1210が1.5Gbit/sとなっています。
これらは「AES+SHA1利用時の初期出荷バージョンでの測定値(双方向)」とのことなので、同じ設定にすれば今回の結果よりもIPsecスループットが向上したり、CPU負荷が低下したりするかもしれません。

IPsecに関するコンフィグの抜粋

今回の計測では、IKEv2、AES256+SHA256をそれぞれ設定しています。

tunnel select 5
 ipsec tunnel 105
  ipsec sa policy 105 5 esp aes256-cbc sha256-hmac
  ipsec ike version 5 2
  ipsec ike encryption 5 aes256-cbc
  ipsec ike hash 5 sha256

CPUの仕様

RTX830は1,333MHzデュアルコア(ARM)、RTX1210は1,000MHzシングルコア(PowerPC)です。
この数字だけ見るとRTX830の方が圧倒的に高性能に思えますが、実際のところ例えばIPsecスループットでのCPU負荷にはほとんど差がありません。(むしろ、仕様上はRTX1210の方がIPsec最大スループットが高い)
そもそもアーキテクチャが異なることもあり、一概にクロック周波数やコア数だけでは比較できないのだと思います。

これまで運用してきた経験上、RTX830は
・ルーティングやIPsec暗号化等、トラフィックの処理はCPU0
ダッシュボードでのHistoryグラフの表示等、ルータ自身の処理はCPU1
というようにCPUコアを使い分けているように思います。
ただし、SSHサーバのホスト鍵生成やファームウェア更新の際はCPU0の負荷も高騰しているため、はっきりとしたことは分かりません。